事例12-1: まるさ商店
まるさ商店(秋田県潟上市天王 代表 佐々木敏さん)は、JR井戸浜駅(小さな無人駅)すぐ近くにあった。今は残念ながら閉店した。このエリアは住宅街、店主の佐々木さんの家も店に隣接してここにある。
佐々木さんのこだわりは、魚を使った惣菜で、大型スーパーではできないほどの手間をかけて製造していた。
佐々木さんは人柄良く人情も厚くて、地域のお客さんのことをいつも考えていた。
我々が手掛けてきた業種で、もっとも難しいのが日常の食品を総合的に扱う店舗である。
商圏が狭いことと顧客が固定化していることが改善を難しくさせている。総合的な商品を扱い続けるには、商圏内人口が一定数必要である。秋田県では多くの町で人口減少が進み、地域店の経営が成り立たなくなりつつある。
改装前と改装後(赤丸はお客さんを示している)
一部のお客様だけに品揃えした商品(洗剤などの消耗品)を売場からレジ裏に集約した。
この小さな商圏で総合化の限界があるとは思いながら、総合化のままで、できる限りのことをやろうと考えた。
お客さんの購買点数を増やすことと客単価を上げること。そのために、通路を複雑にして、滞在時間の増加を狙った。
レジも入り口付近から右奥へと移動して売場を広く見せるように改装を実施した。
実は、別に総菜専門店化も検討していた。佐々木さんも将来を見据えて専門店化に踏み込むべきか悩まれていたが、そこに踏み込めなかったのが、今まで来てくれていたお客さんに対する申し訳なさだった。
いかに大型スーパーとの違いを生み出すか?総合化でどこまで継続できるのか?
改装後の店内、POPもあらたに設置した。
変化を怖れるのは、店主だけではなく、お客さんへの気遣いによることもある。特に高齢化が進む地域ではお客さんの顔が浮かび、改革に踏み込めないこともある。
店主が決断できない理由の一つは品揃えを減らしたくない。佐々木さんも特定のお客さんのためにと年に数個しか売れないものも取り置きされていた。過去からずっと置いていた商品、失くしてしまうとお客さんの残念な顔が浮かぶ。
地域商店の覚悟とは、店主に必要であるが、お客さんに変化をどう受け入れてもらうか?ここで悩む店主は少なくない。相当な覚悟が必要かもしれない。
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