16-1事例: 安藤醸造本店
安藤醸造(秋田県仙北市角館町 代表 安藤雄介さん)は、秋田県を代表する嘉永六年(1853年)創業の170年続く味噌醬油製造会社である。本店は仙北市角館にあり、その建物
は伝統的なレンガ造蔵座敷であり、観光客は建物内を無料で見学できる。
歴史的建造物を訪ねて一年中多くの観光客が訪れる。その一方で建造物の価値を見せることと、自社製造の商品を販売すること、このバランスに悩み続けていた。入口近くにある大きな蔵や帳場、奥座敷へ続く通路。続きの広い畳の間。一部を生活空間にも利用していることから、伝統、商売、生活の3つの空間が混在。このバランスが悪いと雑然としてちぐはぐな感じがする。
観光客の見学動線と、滞在動線を意識しながら、商品に埋もれていた大きな蔵を第一の動線にした。
正面入り口を整理し伝統的な室内で梁などを見えるようにして、今も生活空間の一部であった畳敷きに商品を陳列した。
レジ奥にも商品を陳列し、奥座敷までの陳列スペースを減らした。
空間が広く見えるように売場を構成し直した。
伝統的価値を存続させるには、古き価値であるからその維持や管理にコストがかかる。経済性が両立できなければ伝統は維持できない。
秋田県の誇りでもある代表的な場所。ここで収益を上げることを伝統とともに両立させるための改革であった。
地方の多く存在する伝統的な建造物。伝統文化と商品販売を高次元で空間融合させることが必要である。
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