行動心理学はいま注目されている。ここは行動心理学を学ぶことが目的ではない。地方の店舗を再生するために顧客の購買行動を高めるために行動心理学を応用しているにすぎない。
人間の行動は常に合理的であるとは限らない。特に買い物においては合理性を欠くことが多い。
冷静に考えれば必要でないものを買ってしまったり、買わなかったことを後悔したり。
これを店舗の立場からすると、買うつもりがなかった顧客に売ったら成功であり、買わなかった顧客に後悔を与えられたら店としての価値は高い。
ここでは店舗再生に関する理論を紹介する。
・初頭効果
最初に受けた情報に影響されること。第一印象のイメージが良くも悪くもあとあとまで残ることを示す。店舗の第一印象として、たまたま通りかかった人が見たままの。汚い店や入りにくい、いつも閉まっているなどイメージがつくと、お客さんになりにくい。そのイメージを覆すのに時間と機会が必要になる。商店街イベントなどで、そのイメージが覆されれば良いのだが・・・
・ディドロ効果
身の回りを一定のブランドやシリーズで揃えたくなる心理。一つの購買が次の関連購買をするときにも、ランクを下げないで揃えたくなるという心理。
人は生活レベルを下げたくないので、一つの購買から生活レベルを上げるために、一定レベルの商品を買い続ける。売り手側が安いものしか売れないのではという先入観を払しょくして、生活レベルが上がる商品を関連して展示すべき
・パーソナルスペース
人は見知らぬ他人と一定の距離を取りたいもの。他人と近すぎると大きなストレスとなる。直径60センチくらいの円空間には他人がいてほしくない。店舗ではメイン通路として120センチ以上を。それ以下に狭いとすれ違いにストレスを感じる。店の奥までの通路が狭いと、奥へと人が入らない。ただし通路幅は感覚的なもので、広くても窮屈を感じる場合もある。
・ストループ効果
色や文字の情報の認識がずれていると迷いや判断に時間がかかること。先入観によっても影響される。
店舗で商品の色による陳列や、商品とプライスの大きさのバランスに違和感が生まれること。人は違和感があると理解を拒絶する。陳列に法則性をもつこと。狭い店舗では形状は横へ陳列し、色は縦に陳列するのが望ましい。違和感を払しょくできる。
・滞在時間
店舗でのお客さんの滞在時間を上げるもっとも効果的な方法はレジ位置をなるべく店内の奥に配置すること。レジが入口に近いと、お客さんは出口のことを考えるため、ゆっくり滞在することができない。
売場に滞在空間(パーソナルスペースを確保)を設けることで空間に安心できることから、滞在時間は長くなる。ここで購買動機を高めることができる。
・決定回避の法則
多くの選択肢があると人は思考停止してしまう。選べなくなってしまう。これは大型店に対して品揃えが少ないというのが弱みにはならない。お客さんはいま大型店においても店舗では比較していない。今家にあるものやあったもの、ネットや他店で見たものなど、比較するのはお客さんの脳の中。いくら品揃えがあっても意味がない。むしろなぜこの商品を店に選んで置いているのか?を伝えたほうがいい。
・クレショフ効果
関係性のないものを見て、勝手にイメージを起こしてしまう状態。これは店舗の仕掛けに重要。下着とキャリーケースを並べたらお泊りを、スケッチブックとお菓子を並べると遠足を想像させる。売れる店舗ではこうした関連展示(クロスMD)によって客単価を増加させている。お客さんが勝手に想像するので店舗はクレショフ効果が生まれるかもと、試してみるだけでよい。
・ツャイガルニク効果
実現できたことよりも、実現できなかったことや中途半端になっている状態をより意識することをいう。
買えたことは、どこで買ったかもすぐに忘れてしまうが、買えなかった(断念した)ことは覚えている。リピート客は満足したから増えるのでなく、次の期待があるから再来店する。次回はもっと満足したいことによって増える。お客さんに次いつ入荷するとか、次はこうなるという期待感を与え続けるのが大切。
・ヴィヴレン効果
人は見せびらかすために高い商品に魅力を感じること。実際の購買では、本当は高い商品だが、こんなに安くなっていると思うと購買につながりやすくなる。人は価値があるもの(価格のみならず、希少性、限定、オリジナル)を求める。これは嗜好品の特性。安いものでないと売れないのではなく、価値があるものにはヴィヴレン効果が生まれる。高い商品を売るにはその価値を高めればよい。
・プロスペクト理論
損失回避の法則とも言われる。得することより損したくない気持ちが強い。店舗には来店して満足するかもしれないけれど、それよりもがっかりすることを回避しようとするから。これは期待値と結果が合っていない場合に顕著になる。
がっかりしたくないから、いいものを買おうとするのが人の心理だが、地方の店舗では安いものを売っていれば満足するであろうとあえて高い商品を雑に扱っていることが多い。
・ウインザー効果
よくある口コミへの信頼性を重視すること。店舗では文句も言わないが、時として口コミで悪評を書かれることはある。口コミの悪評を怖れるのではなく、空間の満足度を上げることで、顧客からの紹介を受けられるように努力しよう。
お客さんの表面的な言葉だけではなく、潜在的な不満を事前に読み取ろう。店舗が改革への努力を怠らなければ決して悪い口コミが生まれることはない。
・アンカリング効果
最初に見た数字が後の購買に大きな影響を与えることを指す。店舗では高い商品を印象づけることで、店舗に対する価格イメージが生まれ、購買につながりやすくなる。5万円の商品が印象に残り、2万円は安いと感じるが、5千円を印象づけると2万円は高く感じる。
安い商品は店舗の価格イメージを下げる。高い商品はイメージを高める。店舗をどんなイメージで印象づけるか?
上記理論は人間の行動心理に基づくもの。よく考えるとお客さんの視点で、はじめて来た人の視点でといういわば、「お客さんを理解すべき」の一点に尽きる。
Commenti