現在推進している「0円店舗再生」の全国160店以上の取組みにおける効果として、もっとも大きなものが実は店主の意欲向上効果である。
もともと店舗は事業者のもの。支援者のものではない。店の改革が伴わない一時的な活性策の効果は限定的であり、そうした本質的ではない策は長続きはしない。
店舗が変わることの意義は大きい。
引っ越しや転勤など自分を取り巻く場所が変わることによって、多くの人にはやる気が出る。新天地でもう一度奮起しようとなる。
今まで衰退の一途をたどるしかなかった店舗が再び息を吹きかえし再生したことで、過去の低迷を忘れ去り今からスタートラインに立ったような感覚となる。
改装後には今までは気にもしなかったちょっとした汚れも気になるようになる。
あくまで我々は自立的な再生を願っている。
今はそのスタートラインが時代環境と大きくずれている。こうしてスタートラインを修正するだけで何十年続いてきた低迷の時代を脱出でき、再び店主はやる気になれる。
実際に我々が改善を手掛けた店舗の約8割はかつての衰退の時代へ戻っていくことはなかった。むしろ多くの店舗は過去に衰退の歴史があったことすら忘れ、現在から未来のみ目を向けるようになる。
改装にお金をかけない理由はここにもある。
新しく内装を行うことは確かにきれいになるから悪いことではない。お金をかけない理由は今までの歴史のある商売にあらたな異物を入れないことでもある。今まで店内で使用していた什器や陳列台、または使わなくなったテーブルや椅子、これらを組み合わせて直し店舗を再生することで、改装は早い段階で店主にとって馴染める店舗になる。
補助金などを活用して店舗を活性化させようという動きは少なくない。補助金は事業者が一部のお金を負担して取り組むことであり、いわばお金をかけて改革に取り組むことであるが、我々の見たところ、お金をかけて取り組みことが必ずしも効果を生むことにはならない。むしろお金をかけるために、お金をかけやすいところへと不必要に投資してしまうケースも少なくない。
投資でよくあるのは看板や内装そして広告宣伝。いずれも本質的な改革とはいえない。店舗の内装が古いからお客さんが来ないわけではない、看板が無いからお客さんが来ないわけではない、SNSをやればお客さんが来続けてくれるとは限らない。
むしろお金をかけないというハードルを意識することでこそ、あらたな知恵やアイデアが生まれる。
改装に取り組むには勇気が必要だ。
長年かけて店主がつくりあげた居心地の良い店舗空間を作り直すには大変なエネルギーが必要である。今までと変わった売場では商品の置き場所もわからなくなる。しかし地方の未来を考えれば、それでも改革に取り組まなければならない。
地方の衰退は外部環境のせいではない、
商店自らが無意識に顧客を排除してきたことによる。
地域が自滅する状態である。
商店街ではゾンビ商店が増え、商店街内に住居を構えることのメリットを失いたくない商店主がその場所を次の時代へと明け渡さない。こうした地域で一時的な特典を受けて開業する若者にも限界がある。日本の各地で頑張っている商店街では、空き店舗への新規出店は増えている。こうした商店街もある。しかし若者は商店街でなくてもよい。他にもよい条件で居抜きがあるから。若者がつくる店舗は空間価値も高く、MD力もある。単独店で十分やっていけるのだ。
起業する若者から商店街が見捨てられないことを願う。
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